Column 住まいのコラム

Vol.15

2016年8月16日

『知らないと後悔する。地盤調査と改良のウソ・ホント』

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Vol.15

『知らないと後悔する。地盤調査と改良のウソ・ホント』

2016.7.20up

どうして地盤調査が必要なの?

どうして地盤調査が必要なの?
木造2階建て100m²あたり

 熊本地震など大規模地震が頻発する昨今、住まいの安全性への関心はますます高まっています。そうした中、ここでは建物の耐震に比べて一般に情報が広まっていない印象の地盤調査にあえて注目していきます。

なぜ地盤を知ることが大切なのか。「家を建てると、その下の地面には60トンもの荷重が常にかかり続けます。地盤の調査と適切な改良は、地震の時だけでなく普通の暮らしの中で将来ずっと安心して住める家を建てる大前提となるのです」と理由を語るのは、ポラスグループで地盤改良工事を担うジバテック株式会社の韮澤恵二さん。今回、地盤調査と改良工事のウソ・ホントをわかりやすく教えてくれる地盤改良のスペシャリストです。

 「地盤が軟弱だと建物が傾き、窓やドアが開きづらくなったり基礎や外壁にひびが入ったりします。さらに、すきま風や傾きが生じることで、人によっては体調不良に陥ることもあるのです」と韮澤さん。さらに悪いことに、家を建ててしまえばその下の地盤改良は難しく、部分的に補強できたとしても莫大な費用が掛かってしまいます。どんなに建物の耐震性能が高くても、地盤が弱ければ安心して住むことはできません。家を建てるときには、「土地と建物は一体」と捉える必要があるのです。

地盤調査はやってもやらなくてもいい ←<ウソ>

地盤調査はやってもやらなくてもいい ←<ウソ>?
ジバテック株式会社 取締役 韮澤恵二

 適切な地盤改良の前提となるのが、精度の高い地盤調査です。調査方法は、鉄棒を地面に垂直に差して地盤の強度を調べる『スウェーデン式サウンディング試験』が一般的です。加えて、ポラスでは土質を調べる『ハンドオーガー調査』を実施。韮澤さんは、「強度とともに重要なのが土の性質です。枯葉などが堆積した腐植土は柔らかいだけでなく、地盤改良に用いるセメントと化学反応を起こし補強に十分な強度を得られないことがあるため、土質の調査は改良工法の選択に欠かせない判断材料となります」と、その重要性を語ります。
地盤調査はやってもやらなくてもいい ←<ウソ>?

 また、地域密着型の住宅会社の場合、事業エリアの地盤特性を把握しているケースも。たとえば、ポラスの場合には埼玉・千葉・東京エリアを中心に地盤調査実績53,000件を数え、エリア内の地盤特性を熟知していることが地盤調査にも役立っています。「これまでの調査実績からお客様の土地の地盤特性を割り出すことができます。もちろん、きちんと地盤調査を行い、その地盤に合った改良工法を選定するので、着工後に想定外の工事や工期を要することはありません」と韮澤さん。地盤調査は「やるか、やらないか」ではなく、家づくりに「必須の工程」だと話します。

地盤改良の工法は工事費が高いほうが強くて安心 ←<ウソ>

 地盤調査の後は、必要に応じて適切な改良工事を行います。施工方法は、地面を締固める『表層改良工法』や、土を掘りセメントと土を混ぜた柱状の補強体をつくる『柱状改良工法』、鋼管の杭を強固な地層まで打ち込む『鋼管杭圧入工法』など(※1)があります。
地盤改良の工法は工事費が高いほうが強くて安心 ←<ウソ>

 コスト面では、表層改良は比較的簡易な工事で済むため低コストですが、地盤が強いことが条件になります。一方、鋼管杭圧入工法は重機や資材が大掛かりになり一般的にコストは高め。柱状改良はその中間の位置づけです。

地盤改良の工法は工事費が高いほうが強くて安心 ←<ウソ>
※2 SF-Raft工法紹介サイトへ

 では、強度の面ではどうでしょう。「実は、地盤改良工事にいわゆる松竹梅はないのです。セメントを用いる柱状改良は鋼管杭よりも低コストですが、土質に問題がなければ十分な強度が得られます」と韮澤さん。先に触れたように、腐植土などでは柱状改良を選択できないケースもありますが、ポラスでは独自に『SF-Raft工法』(※2)を開発してこの問題もクリア。土を掘り出さず側方地盤へ押し込みながら掘り進め、そこへセメントミルクを注入して柱状の補強体をつくるため、土とセメントが混ざらず化学反応が起きません。あらゆる土質の地盤に適用できるうえ、残土が少なく低コストも実現しています。

 「地盤改良は高コストの工法を選べば安心なわけではなく、調査結果に合った工法を選ぶことが大事。腐植土の多いエリアでも、SF-Raft工法のような技術開発によって選択の幅は広がっています」。



調査と工事は誰がやっても結果は同じ ←<ウソ>

 地盤の調査と改良工事は誰が行っても結果は同じなのでしょうか。答えはNOです。調査には精度と土質を含めた詳細データを得るスキルが。また、改良工事には調査結果の分析力と採用する工法の施工力が求められます。「調査結果や選定する工法は業者によってばらつきが出ることも珍しくありません。調査会社と施工会社が同じ場合、工法を選ぶ際に調査結果よりも自社の得意な工法やコストを優先するなど、会社都合が生じる可能性があるので注意が必要です」。

 ポラスでは、地盤調査と地盤保証(※3)を行う住宅品質保証株式会社と、改良工事の専門会社であるジバテックを分社化。グループ会社でありながらそれぞれが高い独立性を確保しています。さらに、調査結果をもとにジバテックが改良工法を選定し、住宅品質保証がその工法の採用可否を決めるダブルチェック体制も整備。一方で、先のSF-Raft工法を生んだポラス暮し科学研究所の技術開発力とポラスの豊富なデータベースを共有できるというグループの利点は存分に生かされています。

 さらに、構造計算が義務付けられていない木造2階建てであっても、ポラスが建物の構造計算を行い、それをもとに住宅品質保証が基礎部分の構造計算を実施。「瓦屋根や太陽光パネルを採用したいなど建物に荷重のかかる要望を受けた場合でも、地盤と基礎の強度を過不足なく算出できるのでコスト的にも無駄のない改良工事が実現できます」。

※3 地盤調査または改良工事の瑕疵により建物が不同沈下した場合に適用される保険制度

地盤に原因する建物の不具合は後から現れる ←<ホント>

 「地盤が原因の建物の傾きは、建ててすぐには現れません。じわじわと数年後に傾きはじめ、家や住んでいる人の健康にまで影響を及ぼします」と韮澤さんが話すように、軟弱な地盤はまさに足元から生活を脅かします。過剰な地盤改良は不要ですが、適切な改良にコストをかけることは安心安全な住まいの実現に不可欠です。

 デザインなど目に見える部分に関心が偏りがちな注文住宅ですが、依頼先を選ぶときはぜひ地盤にも意識を向けて、地盤調査と改良工事をきちんと行っている住宅会社かどうかを確認しましょう。責任をもって地盤の改良に取り組んでいる住宅会社なら、情報をウェブサイトなどで発信しているので一度チェックしてみることをおすすめします。

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