Vol.16
2016年10月31日
『住まいの耐震性能を見える化する3Dシミュレーター「ウッド・イノベーター NEXT」が誕生』
Vol.16 『住まいの耐震性能を見える化する3Dシミュレーター「ウッド・イノベーター NEXT」が誕生』
2016.10.31up
完全自由設計に有用な耐震性能のシミュレーションとは
今年の4月に熊本を襲った地震は、大規模な「前震＋本震」が続いたこれまでに例のないものでした。しかし、こうした「前例のない揺れ」の起こる可能性は、今後の地震についても十分に当てはまります。
過去に起きた阪神・淡路大震災や新潟中越地震、東日本大震災はいずれも「最大震度7」と伝えられましたが、震源の深さや規模（マグニチュード）、地層や地形が影響を与える実際の揺れ方は一様ではありませんでした。先の熊本地震では、前震でダメージを受けた住宅が本震で一気に崩れ、阪神・淡路大震災では地下の地質構造が揺れの増幅を招いたのです。
熊本地震以降、ハウスメーカーなどでは震度7の強さで複数回にわたり実物大の住宅を揺らす実験などを行って住宅強度を実証する動きが見られます。しかし、前述のようにさまざまな地震の揺れ方に対応する実験を、形状も構造計算も一邸ずつ異なる完全自由設計の注文住宅で行うのは不可能です。
そこで注目されるのが、多様な揺れを再現できる確度の高いシミュレーションです。ポラスの家づくりの研究開発を担うポラス暮し科学研究所では、木造住宅の耐震性能と倒壊の可能性を解析し、3Dシミュレーションで“見える化”する「ウッド・イノベーター NEXT」を開発。一邸ずつ異なる完全自由設計の住宅の構造計算や間取りを反映したシミュレーションで、より現実に近い解析を可能にしています。
3Dシミュレーションによる“見える化”で的確な耐震補強を実現
では、ウッド・イノベーター NEXTの特徴と役割を見ていきましょう。木造住宅の耐震性能を立体解析し、さらに倒壊予測システムと連動させることで、倒壊の有無までを一元的に3D動画で視覚化。家の内部、外部、全方位からの視点で危険の有無を確認することができます。
この3Dシミュレーションでは、揺れによりダメージを受ける場所が赤く表示されるなど、建物の強度や補強の必要性を理解しやすいことも特徴的。逆に、適切な耐震設計が構造に対する過剰な投資を防ぐことにつながる例もあります。こうした3D動画のわかりやすさを生かして、設計者などが実際に住む人に説明するツールとしても活用されています。
また、シミュレーションは構造計算のためのデータを入力して行われるため、建物の形や間取り、構造や屋根の重さなどが一邸ごとにすべて異なる完全自由設計の住宅でも高精度な解析が可能になります。
地震の揺れ方については、過去に実際に起きた大地震の地震波を再現。単純に「震度7」で揺らすのではなく、熊本地震のような前震と本震を伴う揺れなど多様な揺れ方を再現できるため、将来の未知の地震に対してより安全性の高い住宅設計を導き出す重要な資料として役立っています。
開発者と社員大工の連携がもたらす確かな耐震性能
住宅が計算通りの耐震性能を発揮するためには、現場での確かな施工技術が不可欠です。職人不足が懸念される昨今ですが、ポラスでは時代に先駆けて建築技術訓練校を設置し、「社員大工」の教育に力を注いできました。
職人としての腕を磨くことはもちろん、先のウッド・イノベーター NEXTのほか建築金物や独自の耐力壁（構造の壁）などを開発してきたポラス暮し科学研究所の開発者から直接レクチャーを受ける機会も設けています。職人の“勘”に頼るのではなく、正確な施工方法を学ぶことで耐震を含めた高い住宅性能を実現しています。
大地震から学ぶ、これからの注文住宅のつくりかた
前例のない揺れに対しては、これまでの耐震基準では十分ではないケースがあることを、私たちは熊本地震などから学んできました。だからこそ、過去のさまざまな地震を再現し、かつ一邸ずつ異なる完全自由設計の構造計算に連動させる耐震性能のシミュレーターは、地震大国日本におけるこれからの家づくりには不可欠なツールだと言えるでしょう。
一邸一邸間取りが異なる完全自由設計では、規格型のプランによる実大住宅の振動実験はあまり意味を持ちません。大きな吹き抜けや間仕切り壁のない大空間など、住む人の好みを空間に反映しながら建物の耐震性能を確保するには、実際の設計に即した耐震性能をシミュレーションするオーダーメイドの耐震設計が必要なのです。
理想のライフスタイルを叶える完全自由設計と、予測不能の大地震から大切な家族を守る安心の住まいの両得。それを実現できるのは、ウッド・イノベーター NEXTの活用と確かな施工技術を習得した社員大工による実直な家づくりであることを、ポラスの姿勢から知ることができます。
