Column 住まいのコラム

Vol.34

2020年2月10日

住宅の性能は大工の腕次第! 人手不足の現代職人事情とは?

技術

住宅の性能や品質は職人の技術に左右される

 どこの住宅会社に頼んだとしても、実際に家をつくりあげるのは現場の大工。施工精度は、耐震性などの品質を左右する重要なもの。大工が住宅会社の下請けや孫請けである場合、技術力はどうなのか? 果たして施工精度が担保されるのかという不安を抱く人もいるでしょう。
 建設業界の慢性的な人手不足がいわれるようになって久しい現状。住宅産業も例外ではなく、大工志望の若手は減りベテラン大工の高齢化が進んでいます。
 元々、大工職人の世界は徒弟制度が主流で、修行期間の数年間は給料ももらえないという厳しい慣習があり、高度成長期は安定した会社勤めを選ぶ若者が増え、不人気な職種となりました。バブル崩壊後、日本がかつてない不景気に見まわれる中で他の業界へと転職する大工も出てきて、ますます人手不足が深刻化しています。

自社で大工の育成を行い 職人不足にいち早く対応

 今から約30年前、ポラスでは今後大工不足・職人不足が起きることをいち早く予測し、正面から取り組むことに。1987年に「ポラス建築技術訓練校(中央建築職業訓練校)」が開設されました。昔は、木材の加工は現場でノミやカンナを使い手加工されていましたが、現在では予め木材を加工しておくプレカットで家を建てることが主流となっており、身に付けるべき知識や技術も変わってきています。経験や勘といった曖昧なものに頼るのではなく、体系的に新しい先端技術を理解することが求められているのです。

こだわりの研究成果を現場で再現し建物の強さを発揮

 ポラスは自社の研究所をもち、地震に強い部材を独自に開発してきました。木材を様々な金具でつなぐ接合の仕方には、細部までこだわりがあります。また、自社の工場で生産したプレカット材は、日本全国の住宅会社から求められるほどの精度の高さを誇ります。しかし、いくら部材の質が高くても、大工が建築現場で正しく組み上げることができなければ本来の性能を発揮できません。ポラスの訓練校では、学生たちはきちんと給料をもらいながら大工の基礎知識やポラスの独自技術の理解、金物の付け方、ビスの打ち方まで徹底的に叩き込まれます。生活の心配のない安定した環境で集中して学び、卒業時にはポラスの住宅をつくるスペシャリストになっています。

技能を高めるための努力を一人ひとりが積み重ねる

 訓練校の開校から30年、卒業生は述べ700人を超えました。卒業した訓練生が社員大工や専属大工となり、高品質な家づくりを支えています。訓練校を出た後も技能を磨き続けるため、全国規模の技能大会などへの出場や資格の取得が推奨され、多くの受賞者・資格取得者を排出してきました。2020年現在では、優秀施工者・国土交通大臣顕彰受賞大工8名、技能グランプリ・技能五輪全国大会のメダリスト・受賞者7名、一級建築大工技能士23名と、日本トップレベルの技能者を輩出してきました。ポラスは大工不足を解消するために、大工を育てて数を増やすだけにとどまるのではなく、技術の継承や質の向上を目指し、上質な家を建て続けられる環境を整備し続けています。これからの家づくりを考える上で、「どんな技量を持つ大工が建てるのか」を考えることも大切な指標のひとつになるのではないでしょうか。